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母乳育児etc(第120回日本小児科学会報告)


第120回日本小児科学会学術集会

今回の学会(平成29年4月14日〜16日、東京)は、オートファジー研究でノーベル賞を受賞された大隅先生の特別講演、授乳と離乳シンポジウム、インフルエンザ最新情報シンポジウム、小児ピロリ菌感染症教育講演を中心に参加してきました。

【大隅先生】

酵母などの細胞の中にある大きな液胞(タンパク分解酵素が詰まった袋みたいな構造物)に興味を持たれて、オートファジーと言う真核生物の生命活動に不可欠なメカニズムの解明に大きな足跡を残されました。

先生が非凡なのは、当時 液胞は細胞のゴミ箱くらいの認識しかされていなかった中で、意味の無いものが これほど大きなスペースを締めているのには必ず訳があると思われたそうです。着眼だけではなく 自らの素朴な疑問に真摯に向き合う姿勢が偉業につながったのだと思いました。

【小児ピロリ菌感染症】

ピロリ菌は胃がんを引き起こす確実な発がん因子と認定されたことは有名です。

感染経路は十分には分かっていないようですが、経口感染、家族内(特に親から子)感染が主体で、特に5才以下の乳幼児期に感染成立するようです。現在でも中学生の感染率は5%前後あるようで、治療をしなければ約0.2〜0.4%が胃がんを発症するのだそうです。

自治体では独自に中学生ピロリ菌感染スクリーニングを実施しているところもあるようですが、それ以外の地域にお住いの親御さんでピロリ菌の保菌を確認された方がおられる場合は自主的に子どもたちの検査(※)を考慮されたほうがいいと思います。

※ピロリ菌検査は胃カメラなどで胃炎所見が確認された場合のみ保険が適応されますので、多くの場合 自費検査になります。

【母乳と離乳】

今回、最も注目したものです。これは今後更に勉強を進めて単独のスレッドを立てて行きたいと思っています。

母乳

私が医者になりたて(30年以上前)の頃は、乳児健診で体重の増えが悪い子がいると安易に人工乳の追加を指導したり、感染症予防の観点からもらい乳を禁止したりしていたものでした。

その後、新生児医療の発達・調査から、母乳の免疫効果や早産児に対する新生児壊死性腸炎予防効果、乳児突然死症候群のリスク低下、アレルギー疾患予防、糖尿病リスク低下、認知機能・IQの向上、更には将来の所得にまで影響するなど母乳のもつ偉大な力が再認識され、感染対策を十分行った母乳を貯める母乳バンクの設立や感染対策済みのもらい乳を行っているNICUが増えてきています。

一方、母乳にも鉄やビタミンKが不足しやすいという欠点がありますが、ビタミンKはケイツーシロップで補充できますし、離乳食(complementary food:補完食と言うべきと指摘がありました)は正しく鉄などの不足しやすい栄養素を与えるためにあるものだと言われていました。

ただ、母乳中の鉄の含有量は低いものの、吸収効率は非常によく約50%吸収されるそうです。

一方、人工乳は鉄が強化されていますが、吸収率は母乳の1/10 (0.5%) だからたくさん入っているのだそうです。数字だけを見てはダメということですね。

米国小児学会の「母乳と母乳育児に関する方針宣言」には母乳は補完食の量が増えても最初の一年、児が望むならそれ以上の期間にわたって与えるべきであると明記されています。

虫歯論争はありませんでした。

離乳

離乳状況の疫学調査などが報告されていましたが、離乳がうまく進まない最大の要因の一つに、児に補完食を食べさせようとするあまり、児が自ら食べようとする行為を損なっていることにあるということでした。

これは、以前からよく言われていたことです。

単独で離乳食を食べさせる時間を取っているお母さんをよく見かけます。

離乳食を食べさせようとするあまり、子供にとってもお母さんにとっても食事が仕事になってしまっていることに気づかず、本来楽しい食事が苦痛になってきます。

子供に自由に手づかみで食べさせること(もちろん初期の場合は別ですが)、家族と一緒にワイワイしながら食べさせることが大切です。これこそが食育です。

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