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百日咳は過去の病気と思っていませんか?

百日咳とはよくネーミングしたものだと感心します。

本当に咳が100日間続くんです。

福岡看護大学 岡田先生の講演から

百日咳は今でもとっても怖い病気で

乳児突然死症候群(SIDS)の約1割が百日咳によると疑われているそうです。

昔は10人に一人が死亡していましたが、今でも1歳未満で約1〜2%の死亡率になっています。

百日咳は英語でwhooping coughと言うように、ひどいせきが立て続けに5回以上続けて出て、その後に笛声(長くて高い、ヒューという音を立てながら深く息を吸う音)が聞こえます。

ところが1歳未満では、咳が先行しないことも多く、さらにワクチンを接種していると(乳幼児の百日咳の特徴の一つとされる)白血球の増加が起こらないそうです。

これは臨床診断には辛い点です。

通常、特徴的な咳と白血球(特にリンパ球)増加を診断の助けにすることが多く、これではウイルス性気管支炎などと誤診する危険性を孕みます。

講演でも言及されていましたが、

教科書的には 百日咳の根絶は難しくて

ワクチンで予防できるにもかかわらず発生が増加している唯一の小児疾患です。

この増加の背景には

1)以前にワクチンを接種した人の免疫が弱くなっている。

2)一部の親が子どもにワクチンを接種させようとしない。

と言う問題があります。

どの年齢の人も百日ぜきにかかりますが、

70%以上は5歳未満の小児で、約40%は6カ月未満の乳児で発生します。

2歳未満の小児の場合に最も重篤で、死亡する場合のほぼすべてが6カ月未満の乳児で、肺炎と脳症などの合併症によるものです。

筆者も研修医時代、生後3カ月の女児例を経験しました。

ワクチン接種前でした。

わずかな刺激でも咳が誘発され、ひとたび咳発作が出ると、直ぐに呼吸を止めてしまい、チアノーゼ、心拍数低下をきたしました。

これが家庭で、しかも夜間に起ころうものなら死んでしまうのも当然だと思いました。

片時も保育器の側から離れることができず、何日も保育器脇にボンボンベットを置いて寝泊まりしました。すぐに息を止めるので その度に刺激して呼吸を再開させなければなりませんでした。

児は幸い回復し、保育器から出られたのですが、CT検査では脳のまわりに水が溜まっていました。

おそらく、呼吸停止を繰り返すたび、低酸素状態になり、軽い脳障害を起こしていたものと思われました。

その後も、幾度か大流行を経験しましたが、ワクチン未接種者の症状がいかに酷いものかを痛感させられました。

裏を返せば、適切な時期にワクチン接種することの重要性を認識させられたものです。

ネット情報が氾濫する中で、医療従事者にワクチン不要論を声高に唱えている人がいます。

ワクチンは国策として、国の厚い補償の下に勧められていますが、不要論を唱える医師は、実際に重症患者を経験したことがあるか疑問に感じます。

不要論者の殆どは、彼らの意見に従いワクチンを接種しない選択をした結果、障害を残した子どもたちの救済をどうするつもりなのかを示していません。

ただ、運が悪かったと言うのでしょうか?

欧米では、DTaPを成人期を含めて計5回接種するのが一般的です。

日本は長らくワクチン後進国で、今でも小学校高学年での追加接種は百日咳を含まないDTワクチンです。

そのため、相当数の成人が長引く咳だけを症状に 百日咳の自覚なく菌をばらまき続けています。

また、海外からの持ち込みもこれから益々増えていくでしょう。

一刻も早いDT→DTaPが望まれます。

先日もワクチン接種をせずに全員が感染した一家を経験しました。発端者はお父さんでした。幸い、周囲の乳幼児に影響は無かったようですが、後悔しておられました。

確かにワクチン不要論も一つの考えで、その人たちの選んだ人生を否定するものでは決してありません。

ですが、ワクチンを接種せずに生活すると言う事はシートベルトを着用せずに高速道路を運転しているようなものです。

確かに安全に目的地に到着できる方が多いでしょう。

でも、それは周りのお友達がワクチン接種して感染拡大を防いでくれているからです。

子どもたちには選択権はありません。本当はシートベルトを着用したかったかもしれません。

さらに事故を起こした時、赤の他人を巻き込む危険性も高くなります。

これらのことをどの様に考えるのか? 問いかけてみたいですね。

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