インフルエンザトピックス
2019年に入り全国的にインフルエンザA香港が大流行しています。
過去のブログですが、是非 ご参照ください。
2019/2/1
2018/4/28
学会報告第1報
今シーズン、世界的にインフルエンザが大流行しました。
過去数十年の中で最大規模でした。
流行自体はほぼ収まりましたが、一部保育所などで散見されるところがあり 引き続き要注意です。
神奈川県慶友会けいゆう病院 菅谷先生の教育セミナーから
長文お付き合いください。
インフルエンザはA(ソ連、香港)、B(山形、ニューカレドニア)の二種4系統がヒトに感染をおこすわけですが、以下の傾向があるそうです。
Aソ連:(今シーズン流行したのは俗に新型、豚インフルエンザと言われたものです) はウイルス性肺炎を若年者におこしやすい反面、高齢者には高い免疫を持っている人が多いそうです。
つまり → 高齢者の超過死亡少ない。
A香港:細菌性肺炎を高齢者におこし易くワクチン効果低い。
つまり → 高齢者の超過死亡多い。
B:肺炎合併多く、学級閉鎖に繋がりやすいものの、ワクチン効果が高い。
つまり → 超過死亡少ない。
今シーズンはBが大流行し、全国的に学級閉鎖が多かったですが、ワクチン接種者ほどかかっても軽症な児童が多い印象がありました。
なるほど納得です。
★来シーズンはA香港が流行すると予想されているそうです!
ワクチン効果低いやん⁉️
なら、ワクチンうっても仕方ないなんて思わないで下さい‼️
ワクチンには下記の効果が世界的に認められています。
①発症防止効果あり 50%くらい
②重症化(入院)防止効果あり40〜50%
③集団免疫効果あり
海外では、毎シーズンTest Negative Case-Control Design (TND)という統計手法で年2回(流行直後と総括)ワクチン効果評価をしていて
→ ⭐︎ワクチンは効果があると言うのが常識だそうです。
ところが驚いた事に
先進国の中で 日本だけ調査報告していない‼️んだそうです。
慶應大学は頑張っているみたいですけど。
日本ではワクチン効果に否定的な医者やマスコミが多いようですが、今でも統計学的・診断学的に問趣のある古いレポートを依り処としているようです。
(昔は迅速検査やPCRなんてなかったですし、高熱出たら全部インフルエンザにしてたようなところがありましたからね。)
その最たるものが前橋レポートと言われているものです。
このレポートを根拠に集団接種が廃止されました。
結果、ワクチン接種が激減し、タミフルなどノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)が無かった1990年代はなんと乳幼児の超過死亡が年によって1万~3万人に及んだそうです。
その後、再び接種率の向上とNAIによって超過死亡は集団接種時代相当まで減少してきました。
因みに筆者も若手医師と言われていた頃、ご多聞にもれずインフルエンザワクチンは効果無いと信じて接種しませんでした。
ところが、毎シーズン3回も感染(ペア血清で確認しているので確かです)していました。
さすがに堪らんとワクチンを受けたところ、その後 今日に至るまで20年以上一度も感染していません。毎年、800〜1000人の患者さんと接しているにもかかわらずです‼️
小学生時代、流感にかかった記憶が殆ど無かったのは、実は集団接種のおかげだったんだ…としみじみ。
★迅速検査は有用?
迅速検査を重視 ただし器械判定すべきと提言しています。
反面、アメリカからテストの感度低い(A55.4%、B52.2%) から役に立たないと言うレポートも出ています。
この報告から迅速キットが意味がないと言っている日本の医師がいます。
どっちが正しいの⁉︎
実は、欧米先進国ですら日本みたいに48時間以内に検査する国は殆どなくて、酷い場合は5〜7日も経ってから検査している。なんて事もあり、とてもキットが適正使用がされていない国が多いそうです。
日本ではキットの質が良いことに加え、ほとんどの場合48時間以内に検査をしているので感度が非常に高く(AB共に80%以上)、器械判定では更に高感度で48時間以内なら95%程度だそうです。これをWHOも認めているとのこと。
★タミフルなどノイラミニダーゼ阻害剤の効果について
米国疾病管理予防センター(CDC)、WHO等は効果をはっきりと認めています。
効果がないと言っている日本の医者の多くがコクラングループのレポートをその拠り所としているそうですが、
感染が正しく証明されていないグループで研究していたことや罹病何日も経ってから、しかも入院患者だけに投与していたものが多く、欧米の研究者自体がノイラミニダーゼ阻害剤を適正使用していないことを認めているんだそうです。
↓
世界中で、検査、投薬とも適正使用しているのは日本だけ。
2009年の新型インフルエンザの大流行で死亡が極めて少なく済んだのは日本だけでしたが、診断と治療を適正使用したおかげと、WHOは日本の対応を評価・推奨しています。ただし、全ての国で日本と同じ対応はできないのが実情。
日本は皆保険制度とアクセスのし易さで成し遂げた成果ですが、その皆保険制度が財政危機の主因とは皮肉なものです。
さて具体的に
罹病期間は1日以上短くなる。
発熱は1日半短くなる。
この程度だからNAIは意味ない。自宅で寝てたらいいんだと言う医者がいますが、筆者はそうは思いません。
あくまで平均値ですし、ワクチン効果と併せて投与翌日から解熱したと言う子もたくさんいます。第一1日半でもインフルエンザのあの辛さから解放されるとしたら値打ちあると思います。
更に
小児で中耳炎の合併率34%減少
入院63%、下気道感染44%減少
早期治療で死亡52%、妊婦死亡84%減少
1990年代のワクチンなし、NAIなしの時代の乳幼児超過死亡と併せて
皆さんならどう評価しますか?
★副作用や耐性誘導はどうなの?
タミフルは早々 耐性ウイルスが出て、殺人インフルになるかも と言われましたが、その後も使われ続けています。
当然、色々な施設で研究されていますが、現在のところ
耐性率 5% くらい、薬剤感受性50〜100倍低下するが、臨床症状に影響せず、周囲に感染性を持たない。事が分かってきたようです。
副作用と言われる異常行動ですが、今回のセミナーでは言及されませんでした。
ただ、最近ではインフルエンザ自体の影響の方がはるかに大きいと言われてれています。確かに解熱後タミフル飲んでても異常行動起こしません。
でも、この手の薬は興奮性が大なり小なりありますし、下駄を履かせている可能性はありそうです。
むしろ心配されているのは ゾフルーザ
今シーズンデビューした一回飲んだら終わりという薬。
エンドヌクレアーゼ活性阻害薬でタミフルなどとは作用機序が異なっています。
確かに翌日には咽頭からのインフルエンザ激減、感染性激減するも耐性率は小児で20%、成人10%と高く、3日目とかに再検出率が上がる事もあるらしい…………。
おまけに薬剤感受性も1000倍以上低下するそうです。
いずれにせよ今後広く使用されるでしょうから、検討が進められていくでしょう。
おまけ
筆者はインフルエンザに対する麻黄湯の効果を実感しており、タミフル登場前はメインに使用していました。2000年前から使われている薬でタミフルよりはるかに実績があると言えます。
とは言え、実臨床の場ではタミフルなどNAIに主役を明け渡しました。
今では重症度の高い子に併用したりタミフルで嘔吐などが出たり、興奮性が高くなる子に使っています。
麻黄湯と言えど薬には変わりありません、予防に勝る治療なし。
ワクチンも薬も効果とリスクのトレードオフですね。
筆者はワクチンをこれからも強くお勧めします。