小児喘息治療セミナーに参加してきました。
6月15日(日)東京ドームホテル札幌で行われましたセミナーに参加してきました。
主な主題は、
1)喘息患者さんたちが、治療を継続していく(アドヒアランス)ことの難しさとそれに対する苦労話(開業医の立場、専門病院の立場の違い)
2)喘息は治ることがない病気であるという認識の中で、子供たちに対しては、完全寛解(薬を使わずとも症状が全くなく、限りなく治ったに近い状態)を目指していくために大切なこと
3)発作を自覚していない親御さんや子どもたちが大変多いという現実
4)運動誘発性喘息(EIA)が症状の一つとして非常に重要
5)吸入ステロイド薬または吸入ステロイド薬と気管支拡張剤の合剤の安全性と注意点
特に、気管支拡張剤単独での使用における問題
6)その他 最近、マスコミ報道で問題になりました吸入ステロイド薬使用時の身長抑制の実際などが話題となっていました。
低身長に関しては、New England Journal of Medicineという一流雑誌に載った論文で、私も原著を読みました。「患者約950人の調査で、5~13歳から吸入ステロイド治療を4~6年間受けた患者は、この薬を使わなかった患者と比べて、成人後の身長が平均1.2cm低かった(172cmと171cm)」というものでした。
この数値だけを見た場合、この差をどのように捉えるかは意見がわかれるかもしれません。
一方、喘息コントロールが不十分な子供では、成長障害が生じるという論文もあり、やはり、重症例ほど成人期に持ち越す(キャリーオーバー)可能性が高いこと、5歳頃には気管支のリモデリングといって気管支が傷んで傷が治らない状況になることが知られていますので、私は、適切なコントロールを目指す必要性のほうが高いと思っています。
因みに、私が、外来で糸吹上のおもちゃを使って呼吸音を聴いたり、温度差や暴れた時や深夜に咳が出るかどうかをしつこく伺うのは、喘息または喘息のような病態が隠れていないかどうかを炙り出すためでもあるのです。
喘息診断を適切に行い、余計な薬を使わない、または必要な薬を使わずに気管支のダメージを進めてしまわないためには、親御様の注意深い観察が不可欠です。
壊れたレコードのように同じようなことばかり質問しますが、是非 普段から子どもたちの咳の状態には注意を払っていただければと思います。
写真はホテルロビーに展示してあったWild Cup出場のキリンさんです。
コートジボワール戦の最中のセミナーで、結果を知った途端 会場から一斉にため息が漏れました。